まいちゃんが ぼおっとしていると、ピンポーンというおとが きこえてきました。
どうやら、いとこのおねえさんが かえってきたようです。
まいちゃんは まどをしめると、げんかんまで いっきにはしりました。
かぎをあけ、ドアをひらきます。
そこで まいちゃんは口をぽっかりとあけてしまいました。
だって、そこにはお母さんがいたのですから。
「きょうは かえりがはやいんだね」
「赤ちゃんが生まれたって でんわがあったのよ。まいが おるすばんしているってきいたから、しごとをはやくおわらせたの。
すぐ ごはんのよういをするからね……あら?」
へやにはいるるなり、お母さんは 目をまるくしました。
きれいにかざりつけられたクリスマスツリーと あたたかいりょうりが お母さんをむかえてくれたからです。
「これ、だれがよういしたの?」
「あのね」
サンタになったお父さんが まほうでだしたの。
そういいそうになって、まいちゃんは あわてて口をふさぎました。
お父さんがサンタクロースだということは だれにもいってはいけません。
「まい?」
「うんと、サンタさんがだしてくれたの。それで いっしょにかざったの」
まいちゃんは サンタさんとすごしたときのことを はなします。
「サンタさん、お母さんのつくる かぼちゃがだいすきだって、がんばりすぎないでいいって いってた。あとね、これもらったの」
まいちゃんのはなしをきいたお母さんは くびをかしげました。
「あの子がつくってくれたのかしら?」
そうつぶやきながら お母さんは もっていた白いはこを りょうりのよこに おきました。
そして テーブルの上にあった 小さなはこに 気づきます。
「これはなに?」
「ツリーの中にはいっていたの。お母さんがかえってきたら つけてあげてって」
まいちゃんのことばに お母さんはさらにくびをかしげました。
お母さんが リボンをほどきます。
はこの中からでてきたのは 青い石のついたゆびわでした。
ゆびわは ツリーにかざったほしとおなじように きらきらひかっています。
はこの中には お母さんあてのてがみがありました。
『これからお母さんになるきみへ メリークリスマス』
すると、お母さんはゆかにすわりこんでしまいました。
ゆびわを持つ手がぶるぶるとふるえています。
いつもにないお母さんのようすに まいちゃんはおどろきます。
「お母さん、どうしたの? 何かあったの?」
「ううん。ちがうの……ちがうのよ」
お母さんは まいちゃんをぎゅっとだきしめました。
「あの人は――サンタさんは ほんとうにきていたのかもね」
「そうだよ。とってもたのしかったの」
「そう……」
おかあさんは ほおにこぼれたなみだをぬぐうと、ゆびわをはめました。
お母さんのくすりゆびで 青い石が きらきらひかっています。
大きさもぴったりです。
「お母さんきれい」
まいちゃんのことばに お母さんはとてもうれしそうでした。
それはひさしぶりに見た、お母さんのえがお。
「きょうは まいが とってもいい子だったから、いちごのケーキをかってきたの」
「ほんと?」
「おかしのサンタさんもいっしょよ。ごはんのあとで ケーキたべようね」
「あのね、サンタさんは お父さんにあげるの。つぎのクリスマスまで とっておくの」
そういって まいちゃんは きらきらとひかる ツリーを見あげました。
りいん、りいん。
とおくの空からきこえてくるのは お父さんがならすベルのおと。
それにこたえるように、まいちゃんは小さなベルをひとつ ならしました。
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