まいちゃんとお父さんが へやでおきゃくさんをまっていると、
しゃん しゃん しゃん
しゃん しゃん しゃん
でんきゅうのまたたきとともに おとが きこえてきました。
「なんのおと?」
気になったまいちゃんは きょろきょろ あたりを見てみます。
すると お父さんが いえのまどをあけました。
くらくなった空を見あげ、さびしそうなかおをします。
「どうやら お父さんを むかえにきたみたいだ」
お父さんが 空を ゆびでしめしました。
その先をおいかけたまいちゃんは 「わあ」と をあげました。
トナカイが そりをひいてやってきたからです。
そりが こちらにちかづくと、かれらのあしについたすずが 音をたてます。
トナカイは まいちゃんの いえのまえで とまりました。
「やあやあ あたらしいサンタさん。こんなところにいたんですか。きゅうにいなくなったから とてもしんぱいしたんですよ」
「ごめんなさい。サンタになるまえに むすめと はなしがしたかったんです。すぐ しごとにもどりますね」
お父さんは 金いろのめがねと 白いひげをつけ、赤いぼうしをかぶりました。
「いっちゃうの?」
「お父さんは これから プレゼントをくばりにいかなきゃ」
そりには プレゼントのつまった ふくろがつまれていました。
お父さんのいうことは もっともです。
年にいちどのクリスマス。せかいじゅうの子どもたちが サンタさんからのプレゼントを まっているのです。
それが サンタさんのおしごとだということも わかっています
でも……
「いや」
まいちゃんは くびをよこにふりました。
まいちゃんは お父さんとはなればなれになるのが いやだったのです。
まいちゃんは お父さんのうでにしがみつきました。
「お父さんはここにいるの。ずっといるの!」
「……ごめんね。ちょっとしかいられなくて」
お父さんは まいちゃんのあたまを そっとなでました。
「だいじょうぶ。らいねんのクリスマスも まいちゃんにあいにくるよ。そのつぎも、またそのつぎも。クリスマスのたびに あいにくるよ」
そういってお父さんは じぶんのこしについているベルを 手にしました。
お父さんが、りいん、とおとをかなでます。
すると 赤いリボンのついた ちいさなベルが お父さんのまえに でてきました。
お父さんは それを まいちゃんにわたします。
「このいえの上をとおるときは このかねを かならずならすから。きこえたら これをならして。お父さんのことをおもいだして。
いつか まいちゃんがおとなになって、サンタさんが見えなくなっても お父さんは まいちゃんをずっと 見まもっているよ」
おとうさんのことばは ちょっとむずかしくて まいちゃんは そのぜんぶを りかいすることができませんでした。
でも お父さんとおなじものをもらえたので、まいちゃんは ごきげんです。
「ほんとうに? らいねんのクリスマスも あいにきてくれるの?」
「うん。やくそくするよ」
おとうさんはにっこりとわらいました。
「あたらしいサンタさん いきますよ」
いちばんまえにいたトナカイが お父さんにいいました。
お父さんが そりにのりこみます。
トナカイたちは 足ぶみをはじめました。
しゃんしゃんしゃん、と すずのおとが三かい。
お父さんが ベルをひとつならすと そりがうごきはじめます。
「メリークリスマス」
お父さんが まいちゃんにいいました。
「めりーくりすます」
まいちゃんも おなじことばを かえします。
まいちゃんが手をふると、もらったベルが りんりんと なりました。
お父さんも 大きなベルをならして こたえます。
「まいちゃん、またあおうね」
「やくそくだよ」
こうして サンタになったお父さんは 空のむこうへ たびだったのです。
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