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目の前の魔法使いが詐欺師にしか見えないのですが如何いたしましょう?

3 詐欺魔法使いと私の姪

 久々に従妹の家を訪れると小さな魔法使いが迎えてくれた。
「わたしはまほうつかいもも。まほうのくにへようこそ」
 風呂敷のマントに三角帽子、杖の代わりはペロペロキャンディ。そのいで立ちに私は笑みをこぼした。
「魔法少女っての? 最近ブームみたい」
 リビングでお茶を出しながら従妹は言う。なんでもももちゃんの魔法使いはどのアニメにも当てはまらないだとか。しかも彼女の呪文は難解すぎるらしい。
 そんな話を聞いていると、早速ももちゃんが魔法の呪文を唱え始めた。
「■※○▲★§‰〜 トビラよひらけーっ」
 私は思わず茶を吹いた。
「ね、意味不明でしょ」
 母親である従妹がころころと笑う。私も相づちするが内心はひやひやだ。
 私の記憶が確かなら、ももちゃんが唱えたのは物を壊す呪文だ。昨日教わったから忘れるはずがない。
 誰にも話してはいないけど、私は魔法使いの卵だ。ある日魔法使いにスカウトされ、目下修行中の身である。
 まぁ、そのスカウトした魔法使いもアレっちゃあアレなんだけど。
 それにしても、ももちゃんはあの呪文を何処で覚えたのだろう。あれは魔法使い以外誰も知ることのない言葉のはず。
 私に一抹の不安がよぎる。まさか、ねぇ?
「ねぇももちゃん、その呪文はどこで覚えたのかなー?」
「だんごこーえんにいたおじいちゃんがおしえてくれたの」
 ももちゃんの言う「だんごこーえん」とは、近所の児童公園のことだろう。隣に団子屋さんがあって、そこのみたらし団子は絶品との評判だ。
 確かにヤツはみたらし団子に目がない。
「えっと、そのおじいちゃんってのは、もしかして三角帽子と眼鏡つけた、髭の長い、杖を持ったおじいちゃん?」
「うん。おねえちゃん、おじいちゃんのことしってるの?」
 あ の く そ じ じ い ! なに子供に攻撃魔法を教えてるんだよ。
 杖が本物だったら天変地異が起こっていたぞ。
 それだけじゃない。
 話を聞く限り、ももちゃんは私よりも先に魔法を教わったことになる。私の時はどんだけ頼んでも教えてくれなかったくせに。何よそのお手軽さは。
 あのじじい、いつかぶっ殺してやる。
 私は作ったこぶしにぐっと力をこめた。
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