プロローグ 〜ハレとケ〜
人間はハレ(非日常)とケ(日常)の世界観をもっているのだと、かの民族学者は言っていた。
でも何を持ってハレと呼ぶのか、何がケなのだろうか。
例えば豪華絢爛なパーティ。私ら一般人にはハレの舞台と言うけれど、セレブにとってはそれがケであったりする。
例えば戦場。そこで生きる人達は毎日が死と隣り合わせであって、私らのようなのほほんとした暮らしはむしろ異常に思われるだろう。
何が普通なのか、それはその人の生き様というか、価値観がものを言うのではないだろうか、と私は思う。
そう。ヤツにとってのハレが私にとってケであるように。私にとって普通なことがヤツにとってはものすごく価値のあることのように。
――これは私がヤツと過ごした、私にとってハレで奇妙な三年間の記録である。