かえるのたからもの


 ある秋の一日、動物たちがそれぞれの宝物を見せ合っていました。
 松ぼっくりや栗の実、鮮やかな色の葉――その中でも蛙の宝物はひときわ輝いていました。
 小さな箱の中にハートの模様が入った珠がひとつ入っています。
 その可愛らしさに他の動物たちは目を奪われました。
「どこで拾ってきたの?」
 鳥が聞くと蛙は空から落ちてきたと言いました。
「きっとこれは神さまからの贈り物だよ」
 そう言う兎に蛙も頷きます。
「これは大切な宝物。大切すぎて触るのも恐れ多いんだ」
 蛙は宝物の入っている箱の蓋を閉めました。そして誰にも開けられないよう鍵をかけます。
 物重しい蛙のすがたに他の動物たちもほう、とため息をつきました。
 やがて寒い冬がやってきます。
 蛙は冬の間土の中で寝て過ごします。蛙は土の中へ潜ると鍵のかかった箱を抱えて長い眠りにつきました。
 雪が溶け、春が来ます。
 冬眠から覚めた蛙は宝箱に異変が起きていることに気づきました。
 鍵穴から小さな芽が出ていたのです。
「どうしよう、宝物は大丈夫なのかしら?」
 蛙は気が気ではありません。
 すぐに鍵を解いて確かめたかったのですが、芽が鍵穴を塞いでしまっている以上、どうしようもありません。
 箱を壊すことも考えましたが宝物も一緒に壊れてしまうのではないかと思い、できませんでした。
 芽はやがて双葉となりました。蔓を伸ばし葉を増やします。夏が来るころには蕾をつけ、小さな白い花を沢山咲かせました。
 花が落ちると、そこから緑色の風船が現れます。風船は風に揺れるとからからと音をたてました。何か中に入っているようです。
 蛙は風船のひとつを取ると中を割ってみました。
 するとどうでしょう。中からハートの模様が入った珠が出てきたではありませんか。
 それは蛙が大事にしていた宝物でした。
 そう、蛙の宝物は花の種だったのです。
 蛙はその実を集めると他の動物たちにあげました。
 蛙からの贈り物にみんはとても喜びました。